第1回 なぜ私は両手仲介を選ばないのか
第1回 なぜ私は両手仲介を選ばないのか
保育園M&Aには、売手と買手の双方から依頼を受け、一つのM&Aを成立させる「両手仲介」という方法があります。
一方、私は原則として、「売手または買手のいずれか一方に専属するアドバイザー(FA)」としてM&Aに携わっています。
なぜ、あえてこの方法を選ぶのか。
その理由は、私自身がこれまで保育事業会社を3社買収し、買収後の統合・運営を経験した上で、自ら経営してきた会社をM&Aによって譲渡した経験があるからです。
買う側も、売る側も、実際に経験してきました。
だからこそ、M&Aで最も大切なのは、単に「取引を成立させること」ではないと考えています。
「売手」と「買手」では、立場も目的も違います。
売手にとってM&Aとは、長年育ててきた会社や園を誰に託すのか、従業員や園児にどのような影響があるのか、そして事業をどのように次につなげるのかという重要な決断です。
一方、買手にとっては、その事業を本当に引き継ぐ価値があるのか、財務・労務・行政・契約関係などに問題はないか、買収後にどのように運営していくのかを慎重に見極める必要があります。
特に保育事業では、認可、自治体との関係、保育士などの人材、園児、賃貸借契約、補助金、職員の処遇、運営体制など、一般的な企業M&Aとは異なる論点が数多くあります。
だからこそ私は、売手と買手の双方を同時に代理するのではなく、依頼を受けた一方の側に立ち、その「利益」と「意思決定」を支えることを基本としています。
「成立させる」だけがアドバイザーの仕事ではない
私が考えるアドバイザーの役割は、「どうすればM&Aを成立させられるか」だけを考えることではありません。
むしろ、「この条件で本当に進めてよいのか」、「見落としているリスクはないか」、「買収後に問題にならないか」「今は進めない方がよいのではないか」というところまで、一緒に考えることだと思っています。
場合によっては、M&Aを進めないという判断をお伝えすることもあります。
それも、依頼主の側に立つアドバイザーの重要な役割だと考えています。
M&Aは、契約してからが本当のスタートです。
M&Aは、契約書にサインをすれば終わりではありません。
むしろ、そこからが本当のスタートです。
・買収後、職員とどのように向き合うのか。
・既存の運営方針をどこまで残すのか。
・組織やルールをどう整えるのか。
・現場にどのように説明するのか。
そして、その事業をどのように成長させていくのか。
私は、保育事業会社の買収・統合・運営を実際に経験したからこそ、「成立させること」だけではなく、「成立した後」まで見据えてM&Aを考えることが重要だと考えています。
保育園M&Aだからこそ、実務経験を伝えたい。
保育園M&Aは、財務諸表だけでは分からないことがあります。
現場を見なければ分からないことがあり、経営者と話さなければ分からないことがあります。
そして、実際に買収した後でなければ分からないこともあります。
私は、自ら保育事業を創業、経営し、3社を買収し、統合・運営を経験し、最後にはM&Aによって事業を譲渡しました。
その経験を、これから保育園M&Aを考える経営者の方々に役立てたい。
その思いから始めるのが、「若林雅樹の保育園M&A講座」です。
このシリーズでは、教科書的な一般論だけではなく、私自身の経験をもとに、
・売手側から見たM&A
・買手側から見たM&A
・保育園の企業価値
・デューデリジェンス
・M&A後のPMI
・保育士・職員への対応
・行政・認可に関する論点
・M&Aを進める際に確認すべきこと
・M&Aアドバイザーの役割
などについて、できる限り具体的にお伝えしていきます。
M&Aを成立させることだけを目的とするのではなく、その先にある事業と人の未来まで考える。
それが、私が保育園M&Aに携わる上で大切にしている考え方です。
保育園の譲渡を考えている経営者の方にも、保育事業への参入や事業拡大を考えている経営者の方にも、この「講座」が少しでも判断材料になれば幸いです。
次回は、「保育園を買収するとき、私なら最初に何を見るのか」について、買手側として実際に保育事業会社を買収した経験をもとにお話しします。
